
夏は川で泳ぐ。これは当たり前の権利なのであるぞ、息子よ。小さくまとまるなよとの願いで、四万十へ数年ぶりの遠征となった。シュノーケルは持った か。たもは持ったか。えーい、こうなったら仕掛け網も持っていこう。テナガエビをわんさか獲って、大宴会のはずだったのだが、どうも川の様子がおかしい。
黒尊川のテナガエビたちは、いったいどこに行ったのだろう。詳しいことをききたくても、口屋内のあのオバチャンの店は、扉を閉ざしたまま。もう会うこともかなわないようだ。時は、またひとコマ、歯車をまわしてしまった。

DATE | 天候 | 区間 |
2008/8/9 | 晴 | 神戸ー口屋内 |
2008/8/10 | 晴 | 口屋内 |
2008/8/11 | 晴 | 口屋内ー川登 |
2009/8/12 | 晴のち大雨 | 川登ー中村 |
水質 | ★★★ | いつもの四万十川。3回連続ラッキーです。 |
水量 | ★★+ | 水量は少なめ、瀬らしい瀬はあらわれず。 |

9日。神戸出発は6時。今回は久しぶりに気合いが入っている。一路一路、四国の先、中村を目指す。先発隊は、昨日の夜に既に渋滞回避のために淡路島 へと渡って仮眠と聞くが、子連れの身となればそうもいかない。渋滞回避策としては、第二神明を通らず、六甲トンネルを北に抜け、箕谷からの鵯越え作戦に賭 けた。
これが大正解。きわめて順調。あっという間に、明石海峡から淡路を通り抜け高松道へ。藍住経由で徳島道へ。途中集合の四国・立川PAには9時過ぎに は到着してしまった。これでいけば、12時に中村着という計画も成功しそうだ。が、なかなか先発隊がやってこない。なにやら、高松道の降口を間違った云々 のメールが入ってくる。ということで、朝から、立川名物串刺しバーベキューなどを食しながら、思いっきり和んでしまっているのであった…。
ま、いつものことだし、気にするまい。夜の宴会に備えて、祖谷そばがないかと売店に行ったが、残念ながらここではもう手に入らない。この四国道、便 利になったのはいいのだが、祖谷の里とすっ飛ばしてしまうため、最近とんと祖谷そばと縁遠くなってしまった。これが残念だ。祖谷そばに、四万十のあおさが 入れば、これだけで特上の一品になるのだがなぁ。と思いつつ、かわりになんやら饂飩を買う。
今回の行程は、メインは川下りではない。(おいおい、それは違うだろ、四万十といえばカヌーでしょ。という声はもちろんだが、)今回のコンセプト は、川遊びである。黒尊川を堪能して後、ゆっくり出艇という行程を取っている。だから、要は今日は口屋内まで行けばいいだけで、それほど焦ることはないと いうワケ。
ようよう十時になると、後続が(先発のはずの)合流。これにてメンバー勢揃い。では、いざ、中村へ。須崎で高速はとぎれ、そこからは昔通りの地道100キロ超が待っている。これが問題じゃき。
途中、土佐昭和へと山側に折れていく道の手前の物産センターで「四万十の青さ」をゲット。あとは、ひたすら追い越し追い越し。もちろん道交法に則って礼節を持ってのことのはずではあるが。なんとか、三台の分乗カーが、奇跡的にも、12時に、中村駅前に到着した。
昼飯は、市役所下当たりの店にて。結構新しい造りの食事処の駐車場が入りやすかったため、そこに入って、地元料理を食す。あおさの天ぷら美味しい なぁ。(ええか、息子、本物の旨さはちゃんと覚えておけよ)。テナガエビがさっそく登場、油でさっと揚げて塩をぱらっと散らしただけなのに、何故にこんな に旨いのか。(ええか、息子。旨いもんは、誰が食うても旨いねん)。ほいでもって、この天然ウナギや。どや、旨いや………おへんやないか!!!。これは、 穴子かなんかちゃうんかい?これで鰻丼2500円は暴利やで。憤懣やり方とてどうしようもなく、店を出た。(が、のちに、これが今年の現実であることが分 かってくる)

あとは、買い出し、デポ。四万十大橋を行ったり来たり。そのたびあの渋滞にひっかかってしまうのであるが、下に流れるは、憧れの四万十川。川を見ていると心も落ち着く。
裏川沿いを遡って、口屋内へと向かう。この道は、初めて走る道だったが、こんなにちゃんとした道だとは思っていなかった。いつも川から上がった所し か見ていなかったので一種意外でもあった。そんな中残るこの口屋内の光景は、ほんとうに「未来に残したい日本の景色」というに相応しい。

ただ淋しいことがひとつ。左岸の上にあった商店が店じまいしていた。12年前に初めて訪れた店。当時はペットボトルの水などまだ存在せず、ポリタン クを持って、水をもらいに行ったオバチャンの店だ。天幕は破れたままだし、扉は埃をかぶっており、しばらく開けた形跡がない。8年前に来たときは、凍らせ たペットボトルが売られており、エビやウナギの仕掛けもおいてあった。今度はどこまで変わっているか楽しみにしていたのに…。
あとは、うだうだ過ごす夏の昼下がり。しめは、青さ入り特製うどん。どや、旨いやろ。


さて、あけて10日は黒尊川ざんまい。かつてオバチャンが教えてくれた橋下のポイントまで、遡上する。相変わらずきれいな水が流れている。ただ、どうだ ろ。やっぱり水は少ない。そして、昔ほどキーンとして冷たさは無いように思う。それがどういうことなのか、何故なのかは、私には分からない。

ここは、本来テナガエビポイントである。ゴーグルをかけて、下からゆっくり音を立てずに進んでいくと、川縁近くにテナガエビを見つけることはいとも簡単 だった。だが、どうしても見つけることができない。橋の川下、川上へと相当範囲を広げたがダメだった。もちろん、夜、ライトを照らして赤い目を探せば一目 瞭然であるが、それでは夕食に間に合わない。

本当は、こんな澄んだ水の中で、あのテナガエビ発見に胸驚かせてやりたかったのだが、ちょっと今回は無理だったようだ。しかし捕獲することは何匹かはできた。ただ、大人が三人かかりで、本気になって追いつめてやっと二三匹という大捕獲作戦であった。
昼を過ぎると、口屋内には、ずいぶん人が集まってきた。と、ついに沈下橋ダイブが始まった。私も四万十は三度しか来ていないが、この口屋内での飛び込みは見たことがない。本来、ここはもう少し水量が多く、流れが速い。子どもが飛び込んで遊ぶには危ないポイントだ。
でも、ご覧の通り、今回は橋の礎石の部分まで丸出しになっており、およそ普段より水量としては1メートル近く少ない。だからこそなのだと思うが、ドボントボンと皆が飛び込み始めた。

一応、橋の下を調べてみた。潜り回ったところ障害物はない。ただし、深さは一様ではなく、飛び込む場所を選ばないと川底まで届くこともある。上の写真で飛び込んでいる所はそれほど深くないので、大きな子にはお奨めできない。
もう一つ左岸川の橋桁下の場所は十分深さがあったので、我々は、そちらを選んだ。「父ちゃんが、先に潜っておいた。大丈夫、息子よ、行け。」

沈下橋の礎石部分までは、4メートル。あと減水分の1メートルを足して、5メートル。よくぞ、飛び込んだぞ。褒めてつかわす。
あとは、子どもが飛び込んだからには情けないとのことで、大人どもが、ドボントボン。いい夏休みでございます。

さて、そんな中、嬉しい知らせ。なんとテナガエビが仕掛けかごに入っていたとのこと。おお、スゴイスゴイ。1立方メールほどの大きな篭の中、10㎝ほどの 小さなテナガエビが入っていた。はるばる、篭を持ってきた甲斐があったというものである。でも、人数分にはまだ足りていないなぁ。どうしましょ…。

で、日が暮れて、ランタン灯って夕食だ。おっと、大漁のエビである。たいしたもんだ。帳尻だけは合っている!?(白っぽいエビと、赤いエビがあるように思うのだが、さぁ何故だろう)


11日。いよいよ、口屋内を出発する日がやってきた。(この間、ケータイ電話水没事件などが起こり、ちょいとブルーなのではあるが…)さぁ、川面に出かけよう。四万十は今日も暑い日になりそうだ。
減水の四万十は、ただパドルを漕ぎ、前へ行く以外、あとは、まわりの景色を見るぐらいしかない。きわめてロハスな旅となる。あとは、艇の水をはき出すのが作業といえば、作業である。(なんと愛しきオンボロ艇よ。)
ちょうど昼に鵜の江にさしかかる。直射日光から逃避するように沈下橋下に艇を寄せてカップヌードルの湯を沸かす段取りに入るが、その前になんか冷た いものがほしいとみんなの顔に書いてある。そう口屋内のオバチャンの店がなくなったということは、氷や冷たいビールが手に入らなくなったということ。これ が夏の旅には痛い。

この沈下橋の先、遠く地上に見える売店とおぼしき吾妻屋の所に、自動販売機が見える。少なくともき冷たいジュースはあるだろうとたどり着くと、おっ と店の中の小さな冷蔵ケースにビールを発見。氷結もあるのが有り難い。嬉々として買い込んで戻ると、乾杯の声が沈下橋下に響いたのだった。

さて今日の行程もそれほど急ぐほどのことはない。川登までは、それほど遠くはない。このあたりは、穏やかな大河となるため、カヌー教室の艇やら、屋形船やらがゆらりゆらりと川面を往来する。

もうひとつの川遊びスポットの沈下橋を通過。以前、ぼちゃんと飛び込んだ小学校高学年ぐらいだったあの女の子、元気にそだっているかなぁ。でも、その子だって、計算してみれば、もう成人しているんだねぇ。いやはや、川の流れは絶えずして時間は惜しむことなく過ぎていく。

四時過ぎには川登に到着。今回もいい天気なので、左岸側をキャンプサイトとする。川との高低差があまりないのがイヤなのだが、買い出しを考えると、こちらの方がやっぱりラクチンということになってしまう。
★★ここでワンポイント情報★★
川登もやはり、様変わりしていた。あの魚屋さん兼雑貨店の建物は、すっかり新築され新しい店構えになっていた。だが刺身はちゃんと手に入るので、それは有り難い。値段も昔とあまり変わらないようだ。まあ失われた十年、物価がそんなに変わっているわけではないわなぁ。★
肴は、いつものようにカツオとヨコワの刺身。チロチロと焚き火が燃える中、四万十行の最後の夜が更けていった。

明けて12日。天気予報がおかしなことを言っている。もちろんケータイの天気予報である。湿った空気が南から入り込んで、所により雨とのこと。なん でやねん。昨日もきれいな夕焼けやったで。そんなアホな。「所により」ということだから、どっか違う所のことに違いない。まぁ、気にせんといきまひょ。 と、出艇していったのだが…
空は、青いところもあるのに、おかしいなぁ…
雨やねん。

ここだけ、雨やねん。しかも、強烈な雨やねん。
雨のカヌーほどおもしろくないものはない。
唯一のメリットといえば、日差しが暑くないだけ。今回、帽子を持ってこなかった私としては、まるで打たせ湯にあたっている感じ。バチバチと音を立てて、頭をマッサージしてくれている。まったくもって、嬉しくない。
だから、ただひたすら漕いだ。漕いで漕いで漕ぎまくったら、ずいぶんグループから離れてしまったようだ。別に他意はなかったのだが、今回初登場のO 君にとっては、放っていかれるような寂しさを与えてしまったらしい。空も真っ暗になってくるし、気もそぞろだったというから可哀想なことをしてしまった。

景色を見ることもできないので、結構早くに中村に帰ってきた。
だが、相変わらず、雨だけが僕たちを追っかけてくる。結局あっけない上陸となってしまった。
とりあえず、舟をばらして放置。そのうち雨が止むことを祈りながら、昼食をとるために、町へと避難した。
ほんものの天然ウナギを食べるなら「より道」しかないと思い、記憶をたどりながら向かうと、痛恨の準備中。そのあとも何軒か渡り歩いて、やって昼飯をやっているところに行き当たった。
ここでも天然ウナギを頼んでみたところ、ふつうにオーダーが通ってしまった。ただ、一昨日違う店で、やせ細ったウナギを食べさせられて食べ直しした い云々を伝えると、いきなり今度はオーダーストップ。え? なんで? ただ勘違いで、天然はきらしていましたというばかり。これは何やらおかしいなぁ。
何だか消化不良のような終わり方。雨はあがったとはいえ、艇はもちろん乾いていない。不本意な撤収ゆえにもやもや感が晴れない。 ということで、今夜の宿を急遽確保して、ほんとに旨いもんを食うことにした。きょうどうしても帰らなければならないメンバーとは、ここで解散。ま、明日朝一番に車を走らせば、午後には盆の準備に間に合うだろう。
景色を見ることもできないので、結構早くに中村に帰ってきた。
だが、相変わらず、雨だけが僕たちを追っかけてくる。結局あっけない上陸となってしまった。
とりあえず、舟をばらして放置。そのうち雨が止むことを祈りながら、昼食をとるために、町へと避難した。
ほんものの天然ウナギを食べるなら「より道」しかないと思い、記憶をたどりながら向かうと、痛恨の準備中。そのあとも何軒か渡り歩いて、やって昼飯をやっているところに行き当たった。
ここでも天然ウナギを頼んでみたところ、ふつうにオーダーが通ってしまった。ただ、一昨日違う店で、やせ細ったウナギを食べさせられて食べ直しした い云々を伝えると、いきなり今度はオーダーストップ。え? なんで? ただ勘違いで、天然はきらしていましたというばかり。これは何やらおかしいなぁ。
何だか消化不良のような終わり方。雨はあがったとはいえ、艇はもちろん乾いていない。不本意な撤収ゆえにもやもや感が晴れない。 ということで、今夜の宿を急遽確保して、ほんとに旨いもんを食うことにした。きょうどうしても帰らなければならないメンバーとは、ここで解散。ま、明日朝一番に車を走らせば、午後には盆の準備に間に合うだろう。
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で、どこにくり出したかというと、「味劇場 ちか」。地 元の人も、ちょっと美味しいものを家族で囲むときなどに頻繁に使っているようで、相当な人気店だ。もちろん観光客もやってくるから、すぐ行列ができてしま う。連れが先に行って列んでくれていたからよかったものの、少し遅れてしまった我ら親子だけなら、そうとう待つことになっただろう。カツオ、ヨコワはもち ろん、清水港から入ってくる鯖がうまいんだな、これが。

いつも土産を買う中村駅前の鰹節屋さんのおカミさんに聞いた話、どうも今年の四万十川は、少々おかしいらしい。なんでも水量が少ないため川の温度が 例年にまして高く、川の幸があまり獲れないらしい。黒尊川のテナガエビが姿を消したのも、天然ウナギが痩せているのも、どうやらその辺に原因がありそう だ。今年だけのことなら、いいのだけれど、どうなんだろう。
町もずいぶん、寂しくなっているように思えた。日本の地方は、どんどん疲弊しているのがよく分かる。以前入ったサンリバー四万十という温泉施設も更地になって消えていたのだった。

2008年8月9日
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