家族で、幸せの熊野川。

今回は、番外編。きわめて個人的なお話です。といって、いつも個人的な話だから、結局一緒のような気もするんだけど、まぁツーリングをしていないので、 やっぱり番外編。子供を連れて、小川口で川遊びをしてまいりました。でも、やっぱりキレイでしたよ。ホント、幸せな川です熊野川。

DATE天候区間
2000/8/26小川口
2000/8/27川湯温泉
水質★★★+いつ行っても、変わらぬ清冽さ。嬉しいなぁ。
水量★★★たぶん、標準的な水量だと思う。

私とて、そりゃぁ、やっぱり家族は大事なのである。いつも家族を放ったらかしにして川に行ってるように思われがちだが、子供がまだ小さいから仕方が ない。でも、ちょっと川に浮かべて遊ぶくらいなら、大丈夫かなぁと思ったのである。そう思ったら、もう居ても立ってもいられない。早速、幼児用のPFDを 買いに走った次第である。どうだ、立派な親バカだろう。エッヘン。

神戸からは4時間30分のロングドライブ。意外に遠かったのは、北山川と十津川の合流点から、小川口までの道のりだった。地図で見るとすぐなのだが、山越えになるため、更に優に30分はかかってしまった。

13:30、小川口に到着すると、結構お年を召したファルトボートの一団が撤収作業にかかっているところだった。男の方も女の方も、五十路はとうの 昔に越しているようだが、元気に艇をかたづけていく。フジタの木を使った艇だから、そんなのいっぺんに抱えたら腰をいわしてしまうんじゃないかと、こっち がハラハラしてしまう。何だか、自分の未来を見ているようだった。

が、なんとかそちらは、無事、撤収。それより、こっちの食事の支度の方が大変だ。いつになく強い風。タープを張ることができない。ペグが簡単に飛んでいく。こんな日に限って、風の神様も意地悪だ。

クルマを風避けにして、ルーフキャリアにタープの端を結びつける。やっとのことでタープが自立した。下の一歳児は、火がついたように泣き始めるし、 その反対にバーナーの火は強風でいつのまにか消えている。いっこうに湯が沸かないから、カレーが温まらない。時間をもてあますと上の三歳児はトイレに行き たいといい始める。トイレは遥か向こうの堤防の上、片道五分はかかる。結局1時間ぐらい、アタフタといろんなことに格闘していた。

食後、やっとのことで艇を組み立てるも、強風に煽られて、岸に持っていくのもままならない。まるで凧をかついでいるようなものだ。カヌー初体験がこ れほどまでに大変だったとは、この子は覚えていない。ただ、何となく楽しいような変わったことがあったと覚えていてくれるだけでも御の字なのだろう。

赤ちゃんを遊ばせられる川、なかなかないですよ。

でも、連れてきて良かった。こんな川を見ることなんて、都会に住んでいたら絶対にない。本当の川を知らないで、生きていくことになる。娘よ、息子よ、川というのは透明なんだぞ。心のどこかに残しておいて欲しい。

漕ぎ出した瞬間に娘は大喜び。「お父さん、水が近いねぇ」と言って、ガンネルから手をさし伸ばして、川の水を触っている。カヌーに初めて乗ったときに誰もが感じること。それをやはり彼女も感じているのだった。

三歳と六カ月で、初めての出艇。自然を愛する優しい人間に育ってくれるだろうか。

フェリーグライドしながら、流速の遅いところを探しつつ遡っていく。それでもせいぜい500メートルが限度。いよいよ遡上できない瀬がやってきて、そこが折り返し地点。それでも小1時間ぐらい遊んでいただろうか。小さなカヌーイストがひとり誕生したのだった。

さて、陽もかげり始めた。撤収だ。と思っていると、またまた我が心に激しい怒りを湧かせるヤツラがやってきた。奈良吉野川に続いて、こんなところまでキャツラはやってきているのだ。爆音をたてて。

ジェットスキーである。何で?何で?何で、こんな静寂が包む美しい川を、こいつらが遡ってこなければならないのか?ジェット船は仕方がない。ここの 観光資源であるし、皆さんが想像するほど喧しくはない。だが、ジェットスキーだけは、五月蝿い。ジェット船の比ではない。100倍五月蝿い。

想像したまえ。あのけたたましい音を渓谷に轟かせて、遡っていく様を。悪夢だ。周りで竿を垂れていた鮎釣り師も(熊野川の鮎釣り師は、前にも紹介し たかも知れないが、カヌーにも寛大である)、相当、辟易としていた。しかも、なにをバカたれがと思うのであるが、川の中央部にある浅瀬に乗り上げてスタッ クしているのである。そして、ひたすらスターターをかけようとするが、エンジンはかからず。妙な機械音だけが、川面を去来する。

川の状況も読めないヤツが、北山川に入って来るんじゃない!あほんだら!

うちの三歳の娘でさえ、「うるさいねぇ」「なにしてるのかなぁ」と言っていたぞ。いい加減恥を知れ、情けないヤツラめ。

と、いつまでもオデッセウス的な怒りをあらわにしていても仕方ないし、情操教育的にもよろしくないので、早々にかたづけてクルマを発車させる。

今日のお宿は、川湯温泉の「かめや」さん。艇をクルマの屋根に載せて縛り付ける。明日の朝には乾いているだろう。スキーキャリアというのは意外にファルトボートにむいている。パドルをはさむには、ピッタリだということが判明したのだった。

川湯温泉は、文字どおり川に温泉が湧いている名湯である。河原のいたるところで、石で囲った即席のプライベート露天風呂が簡単にできあがる。熱かったら、川の水を引き入れる。だから当然のことながら、川の水は素晴らしくキレイでなくてはならない。

川は、十津川に流れ込む支流の大塔川。この水がまさに、おそろしく美しいのである。相当の努力をはらっているようだ。もちろんバーベキューなんて もってのほか。ただ川の本来の恩恵だけをいまに残そうとしている場所だ。温泉前あたりでは、流れも優しく、深い所でも大人の背丈ぐらいしかない。だから、 子供たちは一日中でも川で遊んでいる。是非とも、また子供を連れていってやりたいところである。

もちろん、カヌーは無理。せいぜい行けてダッキーだけれど、そんなので下ったら顰蹙を買うのは間違いない。

あくまでも、これはカヌーの番外編。紀州の美しい自然に触れたくなったら、行ってみて欲しい。

2000年8月26日


コメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です