
とうとう、家族でツーリングとあいなった。正確にいうと昨年の夏に熊野川デビューを果たしているのだが、田戸から小川口という短い行程だし、主にキャンプが目的だったので、ツーリングというとこれが初めて。十年来の夢がかなった。

DATE | 天候 | 区間 |
2005/5/2 | 晴れ | 神戸-みなべ |
2005/5/3 | 晴れ | 一枚岩-一雨 |
2005/5/4 | 晴れ | 一雨-河辺 |
2005/5/5 | 晴れ | みなべ-神戸 |
水質 | ★★★ | ちょっと笹濁りなのかな、予想してたほどではなく。 |
水量 | ★★++ | 前々日に慈雨、ファルトがなんとかいける水量に。 |

そう、御存じ本州最南端は潮岬なのである。そのちょいと東側に流れ込んでいるのが清流の噂も轟く、古座川なのである。神戸からは、片道250キロ。 ただしそのうち100キロは地道。距離的にいうとかなりの大物ねらいの感がある。しかも今回家族そろってのツーリング。つまり子供がこの距離に耐えられる かという問題があったのである。
で、持つべきものは友である。なんと独身貴族のK氏は、紀州はみなべ、梅の里に別荘を持っていたのである。えらいっ。実にお目が高い。みなべイン ターを出てすぐ、150キロポイントに別荘だなんて、まるで古座川にいくためにあるような別荘ではないか。つまりここを中間ベースキャンプにして、翌朝に 古座川にアタックするという理想的な行程が組めることになった。学校帰りの娘を待って16:30出発。でもほぼ高速道路一本、18:00過ぎにみなべに到 着。先に別荘についていたK氏に迎え入れてもらった。折しも落陽の刻。海辺のテラスから、太陽が海へと沈んでいく様を拝ませてもらった。

明けて3日、快晴。9:00出発。隣町田辺のサティで買い出し。本日のサービス品はさざえ、30個も入ってなんと1000円ぽっきり。これはすごい。クーラーバックにぶちこんで、一路海辺の道を、潮岬へ。南の果てへ。
ほぼ予定通りに時間は進んでいく。11時半、右前方に潮岬が見えてきた。ここで42号線を別れて山に入る道、371号線がある。ここを北上すれば、 どんぴしゃりと本日のデポ地兼キャンプ地、一雨(ひとふり)にでるはずである。なんとファンタスティックな時間の読みであろうか。と思っていた。ところが である…。
さきほどの立て看板に、「前方土砂崩れ通行止め」と書いてあったのは気のせいであろうか。見るに立派な道である。二車線の実に快適な新しい道であ る。何かの間違いだろう、きっと。おそらくずっと奥の山奥のことであろうと思いたくなるのが人情というものである。しかし、情け容赦ない二度目の看板。そ して、ユンボとダンプカー。ダンプのあんちゃんが×印のジェスチャー。とうとうあまい期待は砕かれた。あとほんの数キロのはずなのに。
で、引き返しての串本経由ルート。20キロほどの大回りになる。42号に戻って12時。いまごろ昼食のはずだったのに、完璧なスケジュールだったの に。とぶつぶついいながら、名勝橋杭岩の横を通り過ぎていく。なるほどの奇岩である。まぁ、これを子供に観せに来たつもりになれば、なんとか気もまぎれる かな。うむ。
で、13時半、一雨の河原に車を落とした。川への入り口はちょっと分かりにくい位置にある。トイレや売店があると書いてあったのでもっと広い所かと 思っていたが、存外小振りな河原である。しかし、さすがカヌーのメッカらしく、同じような輩がすでに何組かキャンプサイトを立ち上げていた。
ここを中間デポ地に定め、何となくキャンプ用品を広げて陣地を確保しつつ、食事を取る。ちょっとこのへんで時間を巻かないと、あとあとの行程が不安。15分後出発と決めて、あたふたと口の中に、にぎりめしをほりこんだ。
一雨を上流へと出発すると、まず道路は橋を渡ってT字に突き当たる。これを左に行けば土砂崩れで通れなかった道。右が上流へと向かう道。
ここから、道はうってかわって新しくなる。結構新しいトンネルが穿たれ、道はまっすぐと山奥へと伸びている。そうして、いくつかのトンネルを抜ける と、そこが一枚岩キャンプ場。コンクリートの広い堤の上に、たくさんのテントが花を咲かしていた。そして、その対岸、川を隔てて確かに巨大な巨大な一枚岩 が聳え立っていた。
河原はゴロタ石が広がり、確かにテントを張るのは難しい。だからコンクリートの上がオートキャンプ場になっているのである。テント銀座を前をノロノロとに一番奥まで車を乗り入れる。下流側の方が、岸に近く荷物をおろすには都合がいい。14時。さて、艇の組み立て開始。
ファルホーク艇は、家内に組み立てを任せる。K氏もいるから何とかしてくれるだろう。我が輩は、フジタ艇との格闘が待っている。さすがにすでに3回 も悪戦苦闘しているだけに、今回は比較的(あくまでも比較的だが)順調に組み上がっていく。小一時間後には、なんとか、三艇がそろって河原に並ぶことと なった。

いよいよ出艇、15時35分。結構、早く整った。一枚岩をバックに記念写真といくが、一枚岩はあまりにも巨大で全貌が写らない。

★★ここでワンポイント情報★★
さきほども述べたが、一枚岩キャンプ場は、野趣こそないもののコンクリートの平らな寝場所は確保できるし、炊事場、洗い場もあれば、トイレもあ る。それはそれで、家族連れには有り難いかも知れない。ただし車の乗り入れには注意を。バックでいい気になって運転していると、途中をしきっている溝に落 ちることになる。(この溝にはアルミのネットがかぶせられて車が通れるようになっているのだが、全部を覆っているわけではない。)私の場合、いきなりドカ ンッとタイヤにショックを受けて、何かにぶつけたのかと一瞬肝を冷やした。降りてみると、幸い脱輪を通り越して、向こう側の岩壁にかろうじて乗り上げてい た。もうちょっとで、レッカー車要請という最低に事態になるところだった。★
対岸の展望レストランからの視線を受けながらの出発となる。みんな意地でも余裕の表情をするように、いいですよね。

ここから、一雨までは、それほどややこしい所はない。二三回の瀬があったと思うが、特に難しいことはなく、基本どおりにだいたいカーブの外側をいけ ば浅瀬につかまることもなくやり過ごせる。この間、小さな橋がふたつ、その後赤い立合橋を過ぎると、あとはクリーム色の鶴川橋を見るだけだった。これが一 雨の目印となる。
が、なかなか、熊野の神様はそんな簡単なものではない。最後に、イベントを残しておいてくれた。
最後、ぐるっと左にカープを切っていく所。別にそんなに難しくはない。きれいな三角波が立っているから、ここはど真ん中を堂々と行けばいいはずなのであるが、それを迷ったが最後、瀬の入り口で岩に張り付いた艇が一杯。
これがいつものK氏ならば、「なんとかがんばりなはれ」で済むのだが、コックピットには我が愛息子と伴侶がいる。さっそく救出活動開始。これがまた、やっかいなところで留まっている。
レスキューロープは、届かない。流速は早く、コンタクトは、水深の深い方からしか不可能。すぐ下流には、2級の瀬。
第一ターン、川の中を徒流。ぎりぎり届く所でロープを投げるが、届かず、そのまま、体勢を崩した私は下流の瀬の中に突入。瀬の中で水をしこたまに飲むことになった。
第二ターン、 K氏の艇に乗って、対岸に渡り、そこから浅瀬伝いに救難艇に到着。岩から沈しないように無理矢理引き剥がし、とにかく流れに乗せる。ややこしい瀬ではないので、漕がずに入ったとしても通過は可能のはず。果たして、無事に艇は瀬を越えていった。
あと問題は、私自信。どうやって下流に行けばいいか。K氏の艇がまだ、近くにあるので、それに便乗するが、とてものたうつ瀬を一緒に越えていくのは無理がある。途中にて、離脱。またしても、瀬の中でしこたま、水を飲むことになった。
ともかくも危機は去った。もうすぐそこに、キャンプサイトである。
出艇より一時間半、6キロほどの行程であったが、肉体的ダメージは思ったより酷く、上陸早々、しゃがみ込んで嘔吐してしまった。一リットルのビールは飲めても、一リットルの水はなかなか飲めないでござる。
なんとか5時過ぎに上陸。粛々とキャンプの準備が整っていく。バーベキューセット登場。体調が戻ったところで、さざえのつぼ焼き食べ放題。どうも子 供達はさざえがお気に召さないらしくソーセージばかり食べている。で、やまほど、さざえが余ることになってしまった。屋台で食ったら、ひとつ五百円はいっ てしまうのに、なんと贅沢な…。

さて4日、いい天気である。結構、夜露が降りたようで、テントはべとべと。乾燥にしばらくの時間が必要となる。やはり、家族用のテントとなると、で かくて乾きにくいもんなんだなぁ。適当にひっくりかえして乾いていた、あのこぶりなテントのなんと扱いやすかったことか。今になって分かる。
とはいえ、朝、河原、静寂。一杯の卵スープや、ハムサンドとコーヒーの何と美味しいことか。(こどもに隠れてウィスキーも、これはまた格別に旨い。)今回余裕の行程なるがゆえ、目くじらもたてずに、穏やかな時間が過ぎていく。
とりあえず、先に車を下流上陸点に移動してデポ。途中、一番やっかいそうな、沈下橋付近を下見する。たしかにやっかいだ。下見なしに入るのは危険。しかも、ここは、事前に道路から偵察とないと、川からは延々と続く葦原のため確認することができない。ぜひぜひ注意召されよ。
テントも乾いた、トイレも行った。となると出発するしか、あとすることもない。
かみさんには、とにかく私の漕ぐルートをなぞらえて着いてくるように言って出発した。特に急にあわててルートを変えるのは訳あってのこと、見のがさないで、そのルートに早めに入るようにと。
といって、ここより下流は、沈下橋をのぞいて、ややこしいところはなく、見通しの良い瀬が二三あるだけだ。
で、件の沈下橋であるが、左岸から三個目と四個目の橋脚の間を通って、橋通過後はすぐ右手に波立つところがあるが、それは流木のストレーナーなので近付かないようにして漕ぎすすめなければならなかった。
ところが、この沈下橋の両岸は背の高い葦原になっていて、橋脚の数が数えられない。
下の写真を見ていただければ分かる通り、川面からの視線では、一番左岸よりのルートを取ることとなる。これを間違ってもう一つ右の橋脚間を抜ける と、先ほどのストレーナーにもろにぶつかることになる。いつもあるのか、この日だけあったのかは分からないが、(他のガイド本などには、そのような記述が ないので…)この場所は注意した方がいいように思う。


はたして、何の問題もなく、ゴール地点が見えてきた。まずは月野瀬温泉ぼたん荘の建物が川沿いの道をはさんで見えてくる。明らかに旅館テイストの建物なのですぐ分かる。(ま、それ以外に建物もないのだが)ここを過ぎて少し行くと広大な河原がひろがる。そこがゴール。
河辺に上陸。お昼すぎ、余裕の到着だ。
★★ここでワンポイント情報★★
カヌーに温泉はつきものですよね。で、古座川の場合は、上記月野瀬温泉ぼたん荘ということになる。おそらくできてそれほど経っていないのだろ う。とても綺麗な施設である。入浴だけも可で、料金は400円。撤収後の汗を流すのには、ありがたいロケーションです。宿泊も当然ながらできる。(電話 07357-2-0376)★

2005年5月3日
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