
本一のきれいな濁流は見たことがあるが、まだ、その清流の素顔を見ていない。ここは、リベンジでしょ。ということで、あの静岡の山の奥へ分け入った。
が、楚々としたきれいな水が流れるということは、水位が少ないということ。前回の増水時と同じ気持ちで臨んだことに川の神様は強烈なしっぺ返しを用意していた。
我が艇はキールパイプ断裂の大破。その他エトセトラ。反省しきりの旅となった。

DATE | 天候 | 区間 |
2009/5/3 | 晴 | 神戸ー秋葉橋 |
2009/5/4 | 晴 | 気田ー秋葉橋 |
2009/5/5 | 雨 | 秋葉橋ー神戸 |
水質 | ★★★ | これは、キレイです。清流の名称に違わず。 |
水量 | ★★+ | 水量は少なめ、石のあるところには石がある。 |

3日。
今回は、前回の東名をなめたらアカンとの苦い経験をもとに、ちゃんと早めの出発。朝六時には西宮インターに入るとのコンセンサスのもと、スムーズに移動が執り行われる。ほぼ予定通り、草津SAに七時集合。このパンクチュアルな感じが私としては、とても嬉しい。
こののち、第二名神から、東名阪へ、そして今回初めて乗り入れた伊勢湾湾岸道(こりゃまたたまげた大インフラだ。第二名神同様、ドカンバーンと、余 裕の三車線道が岡崎へとショーットカット道路が続いている)。ただ高速道路1000円現象の魔の手が徐々に押し寄せてくるような不気味な案内板表示、あち こちで赤い渋滞サインが点灯しはじめた。
で、岡崎、このバイパス道を東名の二車線道にそのまま合流させるというアホな設計は、一体誰が立てているのであろうか。渋滞しないわけがない。こん な道路計画を立てる国交省というお馬鹿組織を早く大粛正していただきたい。わたしの願いはただそれだけ。きわめてささやかなものである。
一宮から岡崎は大渋滞。ああ、旧名神を使っていたら、とんでもない目に遭うところだった。そして、浜松以東も大渋滞。ああ、浜松で降りる私たちの何 とラッキーな身であるか。気田川へ行くルートのみが、真空地帯のように、スムーズに流れている。今回はなんか天から祝福されているような気がするのである が…。

予定通り、11時半には遠州鉄道西鹿島駅にて東京から参加のアミーゴをピックアップ。目的地秋葉神社、その向かい地の旨いそば屋(前回の紀行文参照のこと)に13時到着。何ともここまで完璧な塩梅なのであった。

本日は、秋葉下社下の河原で野営のみ。で、ささやかなバーベキューだったり、焚き火だったり、去年ののこり花火だったりを、野趣の中、気持ちよくやっていたのであったが…
どうも、数十メートル先のキャンプサイトが、気にかかる。
はっきり言って、五月蠅い。ほんとに五月に蠅がまとわりつくように、うっとうしい。
いまどき、どっからあんなでっかいラジカセを用意してくるのか分からないが、とにかく、野趣もくそもへったくれもない大サウンドが聞こえてくる。いろんな雑多な音楽が、ただ大きな音であることこそが意味のあることのように響いてくる。
以前にオートキャンプ場に泊まって、大変な目に遭ったが、狭いキャンプ場であったし、なんとか、それなりの節度はあった。
が、今回はこの広大な河原、しかもサイト同士遙かに離れているのにこの音響である。だから、ここは、お願いに行くことにした。もう少しボリュームを下げていただけないか、と。
訪ねていくと、どうも日本語をしゃべっていない。え、外人さん? とはいえ、ここまでわざわざ訪ねてきて引き返すつもりもない。誰か英語がしゃべれ るかと尋ねると、ひとりが前に出てきた。で、私は日本人としての礼節をもってして、お願いした。「もう少し、静かにしてくれないか」と。するとその男が仲 間たちに何かポルトガル語でいい。笑いが起こった。
群れないと何もできない奴らというものは、哀れな奴らである。すぐ三人ぐらいが、胸をつきだして、すごみながら私を取り囲む。で英語が唯一しゃべれ る奴が、「あっちへいけ。俺たちには音楽が要るんだ。ファック、シット、マザーファッカー」と来た。英語で言われているから、侮辱された感じはしないので あるが、意味的には、悪意があるのでこれはいただけない。管理所に、お願いすることにするがそれでもいいか?と聞くと、やはり「シットだ。ビッチだ。」と 映画で覚えたような台詞が帰ってくる。
仕方がないので、そのようにした。ただ、私の場合、こういうときは、徹底的に手をまわす。管理人を呼び、警察へ通報し、すぐ巡回を要請した、残念な がら。もともとは、私、偏見を持たない平和主義者である。それは、ご理解いただきたい。ただ、理不尽よりも、正義のほうが好きなだけである。
夜十時を回っても、大音響を鳴らしていた彼らは、やっとやってきた警察官によって、指導と身柄証明とか行われた。そして、彼らが撤去しない限り、不安の残る我々としては、徹底的に警官に対して、連絡系統の保全を要求した。

ただ、今回失敗だったのは、女、子どもがこちらに居ることだった。平和主義者にとってはイヤーなことだが。テントまわりや、目印になるところには、 こっそりと、棍棒をいくつも忍ばせた。子どもはジープの中で眠らせた。さんざん、パーティーの仲間からは、「お前は、貴男は無謀だ」とか叱られてしまった が、結局、あの手のものどもはこっちから話をしなかったとしてもどこで何をするか分からない。それには、公にして、大げさなくらい予防線をはることが一番 だと思っている。いまでも。
そうして、眠れない、一夜が過ぎていった。胸元に木刀を一本携えながら…。

明けて4日。彼らは、朝早々に引き揚げていった。みんなが、起きたときにはもう誰もいない。私としては、何もなかったものの、ボーッと寝不足のうつろな朝の訪れであった。
もう、それは済んだこと。さて、いよいよ本日は、清流・気田川の川面へ。

気田の平木大橋の上へ。右岸堤防道から、アクセスする。
いつものように、艇の組み立てには、すったもんだするのだが(それは顔に表れる)、とりあえず4杯が、組み上がり、いよいよ出艇式。十時半の予定が、やっぱり十一時にずれ込むが、各艇は美しい水面に漕ぎだしていった。
ガイドブックには、穏やか清流系と紹介されているので、何の警戒心もなく出艇していったのだが、波乱含みな感じはどことなく漂っていたのであった。
浅い。それが最初の感想だ。

平木大橋を越えて、ちょっと河原側によるとすぐ石を掻いた。方向転換を急ぐ。

で、早速瀬音が聞こえるが、まばらな白波が、あっちこっちに立っている。ここは岩だらけの瀬。延々と散歩して舟を落としていく。

宮川橋を通過して、少し行った所に落とし穴は仕組まれていた。
ツーリングガイドには、「一級の瀬、岩が点在しているのでコースどり要注意」と書いてある。ちゃんと書いてあるのに、下見なしにパーティーは次々に 飛び込んでいった。一級の瀬という言葉に安心しきってしまった。ダメだなぁ、最近。ルートファインディングの習慣がなくなりつつある。これは、川の神様の 戒めなのかも知れない。
痛恨のキールパイプ断裂の事態となった。

この写真の瀬が、その現場。たいしたことは無いのである。ただ複数の要因が重なると、話は違う。たとえば、前の艇との距離がちょっとつまりぎみで あったとか、その艇が隠れ岩に乗り上げたとか、その艇に追突することになるとか、その結果前の艇は岩を乗り越えて難を逃れるものの、そのはずみでこっちの 艇は横向きになって岩にブローチングするとか。川上に傾いて貼り付いたためコックピットにあっという間に水がはいってくるとか。まず前に乗っている息子を 引きずり出して避難させるとか。
ああ、艇が曲がっていく…。なんとか仲間に手伝ってもらって引き剥がしたものの、あっちこっちのパイプが曲がり、キールはすっぱりと切れていた。
とりあえず、この河原にて昼飯。消沈のあまり、カップヌードルの味もいまいちだ。
とりあえず、針金で断裂部分をぐるぐる巻きにして固定。なんとか緩い瀬ぐらいなら堪えられそうだ。


一草の橋を過ぎてしばらくすると、左岸道路の上にガソリンスタンドが見えてくる。その横がコンビニ、この辺では唯一の買い出しポイントだ。

途中、結構直角のカーブがやってくる。流れがそれほど速くないので、特に危なくはないのであるが、油断していると横っ腹を擦りそうになる。息子は「ぶつか るぶつかる」と焦るのがオモシロイので、ぎりぎりのコース取りをしていたら、こっそりとひかえていた岩にあおられて、とうとう沈。
すまんすまん、息子よ。どうだ、はじめての沈は?と声をかけようとするが、あれ浮かび上がってこない。流れていくミニパドルを確保した頃、やっと水 面に顔を出した。コックピットにすっぽりと収まってしまったらしいが、ポセイドン・アドベンチャーでもあるまいし、さっさと飛び出せばいいものをと思う が、(ちょっと肝を冷やした。)
しかし、これだけきれいな水だと、沈もまた楽し。(もちろん、息子も同意である。なぁ!)
沈をしておいて、何なのだが、たいしてややこしい所はない。秋葉橋までで、唯一問題なのが、キールパイプを折った件の瀬だけ。あとは、穏やかな清流、あっけなく秋葉下社のキャンプサイトまで戻ってきてしまった。(息子だけがさんざんだったと言っているが)

四時に無事到着。
さっさと着替えて、温泉へ、買い出しへと急ぐ。(この辺で唯一の風呂となる春野町福祉センターについては前回記録をご参考に)。
夜は、昨日の薪を活かして、すぐにキャンプファイアーは美しく炎をあげた。


5日。雨である。これは、本気の雨である。十何年ぶりに出したカッパは、ゴムが干からびておりナイロンベルトで締め上げないと役に立たなかったが、防水能力だけはさすがにビニール合羽である。持ってきていて良かった。
が、楽しくはない。当たり前であるが…。
ツアーは中止。まぁ、皆が一緒に帰れるのは幸せであるが、この撤収、雨まみれの用具をどんどん車に積んでいくのは、嫌ですわなぁ。ああ、神様何か失礼しましたですか。助けてパパヤですわ。
さて、帰り。1000円高速の威力をしこたま味わった。前に進みまへんわ。静岡で渋滞に入ったとなれば、いつ大阪まで帰り着くんだろう。あーあ。
(ただ伊勢湾岸道から、新名神を使うと、そこは順調。それ以外の東名・名神は深夜まで大渋滞だったようだが、幸いマシであったようだ。)

★★ここでワンポイント情報★★
ファルホークにお乗りの、カヌー仲間のみなさん。そろそろ艇もボロボロ、ファルホーク・エンブレムも剥がれ落ちて、これをいじましく貼りなおすのも何だかなぁ…と思っていらっしゃるご同輩は多いのではないかしらん。
が、しかし、嬉しいことに北陸モンベルの飯山工場(電話番号は、昔と変わらず0269-62-3367)のス タッフは、われらオンボロ艇のパーツを供給すべく、まだ頑張っていらっしゃるぞぉ。もちろん断裂したキールパイプをオーダーすることになったのだが、つい でにいつまでパーツはあるのか尋ねてみた。
すると、同口径のアルミパイプがまだ随分あるので、それがある限りは対応し続けますよとの有り難いお言葉。届いた一本1576円のK4パイプを握りしめながら、私は、長野に向かって深々と頭を垂れたのであった。★
2009年5月3日
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