慈雨にて、美しき増水。十三年ぶりの再会、仁淀川。

それは、まだこの艇にひとつも穴が空いていない頃の話である。幻の清流・仁淀川へと深く分け入った。当時、土佐は遠く、祖谷の隠れ里を通っていく道があるばかり。

川面に浮かべた艇は、まるで空気の上に浮いているかのようだった。あれから取り巻く環境は随分変わってしまったようでもあるが、川は相変わらず清流のままでいてくれた。

しかも、澄んだ水のままに増水、約1メートル弱。ファルト行の最高のコンディションで迎えてくれた。

(今回より、いよいよこのサイトもブロードバンド版。つくり始めた14年前は、如何にテキストベースにして軽く走らせるかが、ホームページづくりの模範とされたが、それも今は昔。とうとう動画もはめこんでしまったし、そろそろ宗旨替えの頃合いかなぁ…。)

DATE天候区間
2009/8/16 神戸ー小浜
2009/8/17小浜ー黒瀬
2009/8/18晴 黒瀬ー仁淀川橋 
水質★★★これは、キレイです。清流の名称に違わず。
水量★★★++約7~80㎝の増水。コンディションは最高。

16日。

今年も、四国へ行けるとは、ああ有り難や。これも千円高速のおかげですわ。とはいうものの、お盆のラッシュに巻き込まれたくはない。で、どうなるかというと、帰省の真反対の行動ですわ。お盆最終の日曜日に四国へ渡るとなれば、これはもう余裕ですわ。

がんがん飛ばしていると、あっという間に土佐に入ってしまい、JR伊野駅前には、12時前には到着してしまった。仲間との約束は13時、1時間のひ まつぶしが必要となった。まあ、昼飯処でも探してみようかと伊野駅まわりを歩いてみると、何にもない。ただコンビニがあるばかり、本当に何にもない。これ は、まずいっすよ。

来る途中にショッピングモールのようなものがあった。そこまで、もどって偵察することにした。スーパーの他にツタヤとか、しまむらとか、CoCo壱 番が入っている田舎の風情もへったくれもない普通のショッピング・モールだが、無いよりはまし。ここを集合拠点として再設定。各車へ携帯メールが飛ぶ。便 利な時代になったものです。昔だったら、じっーっとみんなが集合するまで待つしか方法はなかったんだもんなぁ。ジャスト13時に全員集合。

★★ここでワンポイント情報★★

結局、買い出しポイントとしては、ここが一番便利といえる。食事も、奥まったところに地域物産センター「レストパークいの」(電話 088-893-4688)という所があり、そこで地元の食材を出す定食コーナーを利用することができる。もちろん、カツオのたたきも置いてある。好きな ものをピックアップして定食にし、アルコール0%ビールをつけて千円弱は安いんじゃないでしょうか。うれしいことに、例の「四万十の青さ」も置いてありま す。これさえゲットできれば美味しい蕎麦が食べられるぞぉ。隣接地のスーパーで、山ほど氷も調達して出発じゃ。★

本日は、テントサイトと艇を組み立てるだけのやさしめスケジュール。まず、仁淀川橋公園に一台デポ。おお、たくさんの親子連れが川遊びを楽しんでい る。水量も水質も結構いい感じ。そして、二台が上流・越知をめざす。明日夕方、もう一台が黒瀬キャンプ場で合流するので、一日行程分のキャンプ地を探すこ とになる。

第1候補・本村キャンプ場、最近できた所らしく横畠大橋をわたってすぐの急傾斜を下っていくことになるのだが、さびしい仮設トイレがぽつんとあるだ け。結構ごつごつした岩が多い場所にて、パス。第2候補・宮ノ前公園キャンプ場、越知の町の少し上流にある公園施設であるが、なんか林間学校の生徒やら、 各種団体大型観光バスが来ており、川辺にテントを張る感じじゃないということで、パス。いよいよ第3候補・小浜キャンプ場を探す。ちょっと分かりにくいの は、伊野方面から来ると今成の隧道を出てすぐを右に曲がらなくてはならないこと。反対に横倉から橋をわたっていくとなると、今成隧道に入るすぐ手前の細い 道を左に曲がっていくことになる。見ればそのような看板も立っているが、初めて行った場合はまずわからないと思う。

なんか一応、トイレはあります。河原も広めではあります。ただし要注意は、シャリシャリの小石でできていたりします。不用意に飛び込むとスタッグし ます。(我々も一台はまってしまいました。なんとかJAFを呼ばずに済みましたが…)、ちょいと寂しいサイトですが、本来はこのようなところがカヌーには 合っているのではないかしらん。ただし、小さなお子さまには、ちょっとホームシックなムードを醸し出しているかも知れません。

何の飾りもそっけもない小浜キャンプ場を後にする。

17日、晴れましたよぉ。最高です。10時出艇。予定通りの一時間おしです。

三杯にて出立。この水量なら、ファルトの天国だ。

ようこそ清流・仁淀へ。そこの若いお嬢さん、この川に来るなんて、実にお目が高い。この水の多いコンディションで下れるなんて、幸運中の幸運というもんです。この日のためにインフレータブルで臨んだK氏だが、ファルトで良かったかも…。

大桐川と合流する、宮ノ前公園カヌーポート水路。

昨日サイト偵察に訪れた宮ノ前公園のカヌーポート用傍流を行く。階段だけではなく、スロープもあって、そこから舟を出すようになっている。そのスロープも 随分上まで、水位が行っていたようで、50㎝は裕に増水している。前方右から、大桐川が合流。しかし、特にヤヤこしくはない。そのまま艇を送り込めばいい。

懐かしいなぁ、中仁淀橋との13年ぶりの再会。

越知の町中に来た。以前はあの橋の左岸下手から出発した。橋下にはブロックが敷き詰められていたのを覚えているが、今回は水量が多すぎて、普通に通過できる環境になっていた。ほどよく瀬も立って、小さなお客様はジャバジャバ・タイムを楽しんでいるようだ。

キャンプ地候補だった本村キャンプ場
最大の難所も、水が多いと通過可能になってくれる。

仁淀最大のハザードロック。本来、ここは、ど真ん中の落ち込みの下に、かくれ岩がしのんで行く手を阻んでいる所、しかし今回の水量は、それを覆い尽くして いる。子どもがいるので、充分検討したが、あの右岸の岩の横をぬけていけば、水量が多いから、あっという間に押し出してくれるはず。で、GO。

女の子が、キャーキャー言うのも、それはそれで楽しいものである。たまには、ちょっとしたジェットコースターも要る。

放水口を横目に、次の瀬にはいっていく。

放水口を抜けた後には、また水量が集まって、結構大きな瀬になっているはず。また、キャーキャー楽しいに違いない。

大きな波でしたね。

やはり、相当波をかぶったようです。いい思い出になりますように。騒いだあとには、昼飯もおいしいというもんです。今日も河原にカップヌードルのにおいが漂う昼下がり。

暑い夏には、ニューヨーク・タイム。
片岡の美しい沈下橋をあとにする。

そして、いよいよ片岡の沈下橋へ。あの店の大将は元気だろうか。津蟹はまだでも、鮎はわけてもらえるかなぁ。などと期待してたどり着いたのだが、なんか雰 囲気が変わっている。もっと、あの家は、近くにあったような気がするんだけど、2階建てでもなかったしなぁ、「すんませーん」と扉から叫んでも、誰も出て きてくれない。人の気配はするのだけれども…。残念ながら、再会はかなわなかった。

黒瀬キャンプ場に無事到着。

結構楽しんで下ってきたものです。はや時刻は16時。黒瀬キャンプ場に到着。まあまあ予定通りに後発隊と合流。今日買い出したばかりの冷たい飲み物にありつけたという塩梅です。あと、鮎も少々、今晩の馳走の競争率は高いぞ。

18日、また晴れた。今回は、全然天気の心配がない。いつもは、通称ヤツラと呼ばれる不可解な天気に追い立てられるのであるが、どうやらこのパーティーの組み合わせはOKのご様子。

地図を見れば自明であるのだが、この黒瀬キャンプ場は、東に200メートルほどの山を見上げている。つまり、朝日がなかなか昇らない。イコール、テントが乾かない。仕方がないので、うだうだと朝の支度が進行する。

本日は、冷たいビールとともに四杯の出艇。

八時に出艇となっているが、そんな予定は、たいがいの問屋が許さない。いまだかつて、二回ほどしか成功した試しがない。結局、船出の乾杯は、九時をとうに過ぎている。

とはいえ。晴れれば何でもよろし。酒があればそれこそよろし。冷たい川は、つかればよろし。最終日、ええ一日になりまっせ。カラダが熱なったら、川の水をかぶるんです。

なぁ、お子たち、キレイやろ。

お子たちが多いから、安全策を行こうとする。自然とゆったり、まったりツーリングになるのだが、こんなだらだら感が本来のカヌーやねぇ。最近、どかどかと、瀬につっこむやり方も、もう一度見直したいもんだ。

といってるはなから、T氏瀬にそのままつっこむ。あのなぁ…て…。

まぁ、いろいろあったけど、結局なんとかなったし、まぁ、ええことにしましょ。

また、ハコモン作ってますわ。あほんだらが…。

ぼちぼち、昼飯だんなぁ、といいながら。また、前方に悲しい現実。いったいあのコンクリートの巨大構造物はなんなんだ。巨大天文台か、新しい原子炉でも作る気かぁ?。常識で考えてくれよって、この振り上げた拳を誰に落としたらいいものか。

ほんでもって、お昼がやってきた。左岸の上の道路の位置に、「レストランあおぎ」という看板が見えた。その直ぐ近くには梯子もかかっている。これは、もしや地上に上がれるのかも…ということで、この地で昼食タイム。

しかし、上陸すると、かの梯子にたどり着くには、やーな沼地や藪漕ぎが待っている。これはちょっと、このパーティーには無理でしょうということで、 普通のカップヌードル系の昼食となる。ただ、今回はあとから参加の買出し隊が、西瓜をまるごと運んできている。お子たちには、楽しいスイカ割りが執り行わ れた。棒?もちろん、川原ではパドルという立派な棒が存在します。まぁ、あとは好きにやってくだされ。

わしら、大人は、暑い川原で、冷ウイスキーなどという贅沢なごっつぉうです。しかも、あてはスイカというフルーツ盛りですわ。

この近くには、道の駅があり。どっかから、降りてこられるはずなのだが、どこなんだろ?ま、いいか。

向かい風だ。漕ぐのだ。

ここから先は、瀞ばかり。漕ぐしかない。しかも、向かい風だったりする。がんばれよー。

やがて加田あたりに来ると、左岸に広大な川原が広がる。こちらの方はあまり人が多くないが、水泳場ポイントのようで、アベックが水かけあって楽しん でいる。とっても微笑ましい感じなのだが、そういえば、ワシの青春って、こんな爽やかな瞬間はなかったなぁと思いながら、ちーと羨ましかったりもする。

ようこそジャングル・ツアーへ。

そのころ右岸では、大きな岩が、小さな迷路をつくっている。こんなところをコニョコニョ行くのも、カヌーの楽しみですね。

そして、いよいよ最後のアミューズメント・ポイント。通称「釧路川っぽい」クリークにたどり着く。

なぜ、ここにこんなものがあるのか分からないが、確かに、狭く、木が鬱蒼と茂った水路がある。釧路川というと、確かにそうとも言えるが、ここは流れが無いもんだから、全くもって安全である。子連れで入っても大丈夫。

隘路をわざわざ進んでいく。

この隘路を出るといよいよツアーは、エンディングへのカウントダウン。子どもたちよ、変な父ちゃん母ちゃんを持って良かったなぁ。こんな経験はめったにでけへんのやから…。

この隘路を出るといよいよツアーは、エンディングへのカウントダウン。子どもたちよ、変な父ちゃん母ちゃんを持って良かったなぁ。こんな経験はめったにでけへんのやから…。

下流に見えてきたあの橋が、終着ポイント・仁淀川橋だ。途中、左岸の岩場で悪ガキどもが、肝試しをやっている。道路から川に飛び込めるかどうかを 競っているらしい。高さはどうだろう、十メートルは越えていると思う。どうやら、その辺に淵があるようなのだが、結構狭いポイントではある。近くに岩もあ る。唯一、ガキ大将と思しき輩が飛び込んだが、それ以外に挑戦する子はいないようだ。

決して誉められたことではないが、あるいは、自分の子がするとか言ったら卒倒しそうだが、振り返れば自分も大概なことをやってきたなぁとも思う。少なくとも三回は死の淵の横で遊んでいた。生きているのか、生かされているのか?さて、どうなんだろう。

仁淀川橋が見えてきた。

三時、到着。まあまあ、予定通り。

ここから、道の駅・土佐和紙工芸村の温泉に入りにいったり、デポ車を取りに行ったりすると、どんどん夏の陽も傾いていく。

ここでパーティーはふたつに分かれる。今日中に神戸まで帰る親子と、高知料理を満喫して明日帰る者と。

片や荷物を詰め込んで、別れを告げる。片や、キャンプサイトを設営して、ペコペコ腹になりながら高知へ列車で移動を図る。

★★ここでワンポイント情報★★

たたき亭の、たたき。おお身が透けているぞ。

仁淀橋から、伊野駅に行って高知駅まで出て、繁華街で高知名物を食う。こうなったら意地の行程である。すでに陽は落ちている。そんなときに、タクシーがすぐに捕まるかどうかですべてが決まる。

なんと、仁淀川橋を上がったところに、タクシーの営業所があるのである。(池ハイヤー 電話088-892-1456)よーできた話やなぁ。 19時になっていたが、伊野発19時13分の列車に間に合った。土佐高知までは二十分足らず、高知駅は新築されたらしくすっかり綺麗になっていて驚いた が、チンチン電車は昔のあの趣のまま。はりまや橋まで乗ると、繁華街の中心である。

ここまで頑張ったのだから、どうしても、カツオのたたきが食べたい。ここで、見つけたのは、たたき続けて数十年。その名も「たたき亭」。カウン ターの目の前で、ワラをくべて炎高くたたいてくれる、そんな素晴らしい店にはいることができた。(高知市はりまや町3丁目1-12 電話 088-824-0018)

おお、この塩たたき、身が透けてまっせーっ。(@八時)

こんな町中に、きれいな川。羨ましい。

19日。また晴れた。

残念だけど、もう帰るだけなのだ。また、今日もたくさんの川遊びの親子がやってくる。そりゃぁ、こんな川があったら、毎日でも水浴びに来るよなぁ…。

さらば、仁淀川。今度はいつ会えるのだろう。

2009年8月16日


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