歓喜、由良川スプラッシュ・マウンテン。

ゆらゆらのんびりとは、ちよっと違う川なのである。結構いかつい岩が流れの中に 顔を出し、落ち込みを作り、時には隠れてボートの腹を待ちかまえる。またまたわが愛艇には大きなパッチがひとつ増えることになったが、 この天然のウォータースライダーもなかなかどうして楽しいもの。天気のいい日にまたいつか訪れてみたいと思ってしまった。

DATE天候区間
1997/9/13晴のち小雨下替地-山家
1997/9/14山家-綾部
水質★★++思っていたより綺麗。これなら沈だってOKだ。
水量★★放水13トン。生殺与奪はダムが握っているなんて。

9月13日、朝。神戸の空は、雲ひとつない快晴だった。が、この空からは想像できないのだが 今晩から雨らしいのである。なんでもまた台風が近づいてるんだって、ホヨヨ。 大気が不安定になるんだって、トホホ。 なんでこう週末ばかりが狙われるんだろうなぁ。しかも予定のある週末だけが!。 でもホントに降るの?というぐらい、いい天気。天気予報がはずれることを祈って 出発しよう。いざ六甲の山を越えて。今回は北の方100キロ、由良川なのである。

8:00に表六甲を上りはじめて、六甲北から舞鶴道へ。綾部には9:30には着いてしまった。 意外に近いゲレンデであることが判明。買い出しの後、上流へと遡り始める。すると、早速綾部の橋から大がかりな堰堤を確認。地図にもクッキリと記されているこの堰、ポーテージよりほかに方法はない。まあ、ここが終着点ということになりそうだ。

川沿いの道路を行くのだが、残念ながら川の様子がほとんど見えない。 川から少し離れて走っているのもあるが、川の両岸とも竹林に覆われていて 全く見通しがきかないのである。それはそれで川の自然が守られているのだから 喜ばしいことなのであるが、偵察できないのは不安だし、なにより河原に降りていく 道が見つからないのである。と、 道端になにやら、ノボリ。「観光やな漁」駐車場と書いてある。

つまりは、川原に行けるということだ。入って行くと、 車一台がやっと通れるぐらいの、急な坂。鬱蒼とした竹林の中を下へ下へと続いている。やがて そこを抜けると、突然川の瀬音が聞こえてきた。由良川はちょうどそこで大岩によってすぼめられ ており、1メートルぐらいの落ち込みができている。その流れの中に大きなやなが組まれていた。ここに下の車をデポすることにし、キャンプ地は決定した。

竹が川を取り囲んでいる。荒れ狂う川を抑えてくれているのも、この竹林だ。古人が植林した立派な財産だ。
まんなかに岩があって二つに流れは分かれる。左にはヤナが。右には落ち込みが。でも水量さえあれば右は通れそうだ。

次は、出艇するポイントである。ところが、またしても、川に降りるポイントがない。 あちこち探し、下に降りれそうなところがあったので行くと、これまた行き止まり。その代わりに、 眼下にはまたぞろ堰堤が出現するのだった。

★★ここでワンポイント情報★★

落差10メートルぐらいあるこの堰堤。堤というより、小規模なダムといった感じ。このすぐ下流の右岸に出水口があるようで、放水によっていきなり波立つ瀬ができている。これより上流から舟で下ってきた場合は、 堰堤左岸に着岸し、ポーテージ。魚道と思われる溝の横にあるスロープを かついでいくことになりそう。 道幅は1メートルもないので、ちょっとばかり注意が必要。★

いよいよ降りるポイントがないので、対岸の道路に移ってしばらく下る。なんとかニオイだけを頼りに行くと、何台かのRVが停まっている畔道を発見。 「あれは、おそらく宿敵鮎釣り師の車と見受けたり!」。イコール川原に通じる道があるということ。あまりいい気持ちはしないものの、 仕方ないから、そこから川原へとアクセスすることにする。

農作業をしている方に了承をとってから、畦道の肩に車をデポ。鮎釣り師の巣窟へと降りていった。 10分弱歩いてやっと川原に到着する。いるいる、鮎釣り師。ここでの会話は割愛。 そこそこに機嫌をとりながら、随所に出てくる愚かな言動を心の中で軽蔑しながら、 さっさと舟を組み立てて出艇する。思ったより綺麗な水に、満足する。2:30。

そうすると早速軽快な音のする瀬がやってきた。岩がすこし絡んでるようだけど、それさえ避ければ特に問題はないようだ。というかこの川 の場合、瀬には岩があって当り前という感じ。とにかくゴツゴツしているのである。ファルトで下るなら防護テープ・スポンジ・マットあらゆるものでガードしていった方がいい。それでも空くときは空くのであるが。

岩がまんなかにいる。もしくは端にいる。その他にもいる。そんな川。

ほーら、また穴が空いた。やや?しかも相棒は沈している。最初の瀬にしてこのていたらく。このあと4段の落ち込みの瀬があると聞くが大丈夫なのだろうか……。 さて態勢を整えて再出航。そうすると件の噂の瀬音が聞こえてきた。

右岸に崩れかけたコンクリートの土手がある。ここに登ってファインディングすれば、この4段の瀬の一部始終が見て取れる。なかなかの迫力である。お よそ30メートルおきに4回の落ち込み。150メートルほどの偵察となった。落ち込み自体は50センチぐらいのものであるが、例によってあっちこっちに岩 が顔をのぞかしている。それが厄介なのである。

ちょうど落ち込み直下のストッパーではホワイトウォーター派が楽しそうにパドルを振り回していた。聞くと、落ち込み自体にはややこしい問題はないら しい。ただ勢いをつけないとストッパーにつかまるから、がんばって漕ぐようにとのこと。ということでいよいよ今ツアーのメインイベント。パドルを高くかざ して合図を確認しあうと、我々は漕ぎだした。かのパドラーたちの歓声をあびながら、バッシャーンと落ち込みを通過していったのだった。

当初一回目の落ち込みを越えたところでエディーに入って、態勢を立て直す予定だったが、巨艦二人艇ファルトがそんな予定通りにいくはずがないし、 いったら楽しくない。アワワアワワといいながら、二段目に突入。三段目に突入。予定外のところで休憩して四段目に突入。していったのであった。この愉快な 天然のウォータースライダーにいつしか日々の憂いは消え去り、またいつのまにかデッキにあったはずのマップケースも消え去っていた。(ああ、愛しいマップ ケースは、いまもあのストッパーの中で永久回転運動を繰り返しているのだろうか。高かったコンパスと、買ったばかりのマップメーターと、重石にしていた 「わが輩は猫である」とともに。)

★★ここでワンポイント情報★★

今回の我々のツアーの基本情報は『カヌーライフ14号』である。しかしながら川は刻々と変化するもの、あの川相とはちょっと違っていた。まず水 量。ダムの放水は事前に問い合わせると13トン。これが標準的ではあるらしいが。(おそらくカヌーライフの記事は20トンはあるのではないか。)これでい くと、あっちこっちに岩や障害物が露出する。注意されたし。13トンとなると、件の記事に出てくる「流木の瀬」は、通るコースがかなりせばまって竹の枝と の戦いは不可避になってくる。また、おそらく「串刺しの瀬」というのは、山家のやながつくられていたところだと思うのだが、左岸側は場合によっては通れな いか、若しくはやなの土台となる鉄柵がギラリと光っているような恐ろしい場所になるはずだ。★

流木の瀬で、竹の攻撃をもろに顔面に受けた私は、前のハッチで漕ぐ相棒にすっかり任せっきりで終着点を迎えた。山家のキャンプ地に到着したのは、5 時近く。ダムの水もそろそろ少なくなってきた頃だった。デポした車をとりに行く頃にいよいよ雨は降りだした。雨、雨、雨。次の日も雨、雨雨。

翌9月14日、朝になったものの天気は晴れない。だから気も晴れない。のろのろと用意するでもなし、撤収するでもなし時間を過ごす。キャンプ地前の 観光ヤナでは、朝も早くから地元の子どもたちがやってきて、雨に濡れながら体験ヤナ漁を始めた。が、これがなんと、似非ヤナ漁。ヤナの上流5メートルぐら いのところから、世話役のおじさんが養殖アユを投げ込む。それをヤナの上に立つ子どもが受け取る。投げる、受ける。はい次。投げる、受ける。はい次。投げ る、受ける。………。

さあ、もうここを後にしよう、雨ではあるが。水量も増えてきた。この辺りの水量が回復するのは、ダムの放水後3時間30分。ダムは7時に放水を開始する。つまり10時30分、我々は再び水面へと漕ぎだした。

あいかわらず岩の多い川である。応急手当のガムテープは雨のためなかなか接着力を持たず、何度も何度も貼りなおさなければならない。

赤い橋が見えてくると、なおさら岩が多くなってくる。

あとで橋の上から見てみたが、この辺りは岩の巣窟といった感じだった。

そして最後のプレイスポットとなる三点セットの瀬と 呼ばれるところがやってくるのである。なかなか愉しそうな落ち込みである。すぐ脇に大きな岩があって、そのうえからこの落ち込みを真下にのぞき込むことが できる。瀬を越えて正面に岩が迫ってくるから早めに左へと回避しなければならないが、それはまず大丈夫だろう。早速、相棒は気持ちよさそうに漕ぎ抜けて いった。

ところで、三点セットの瀬とは何と何と何の三点のことなのだろう。 おーい、だれか解決してくれ!

そして我々二人艇も気持ちよく漕ぎ抜けるはずだった。なのに、もしやもしやの、沈。インディストラクティビリティー号にとっては初めての沈、屈辱の 沈を受けてしまったのだった。時折隠れ岩と艇にはさまれて悲鳴をあげつつ、ゆらゆらと、ゆらがわを流されていくクルー二人。雨の中、なかなか、おつなもの である。

そして我々二人艇も気持ちよく漕ぎ抜けるはずだった。なのに、もしやもしやの、沈。インディストラクティビリティー号にとっては初めての沈、屈辱の 沈を受けてしまったのだった。時折隠れ岩と艇にはさまれて悲鳴をあげつつ、ゆらゆらと、ゆらがわを流されていくクルー二人。雨の中、なかなか、おつなもの である。

この後、一二か所瀬がやってくるだろうか、それぐらいで終着点綾部がやってくる。大橋が見えると、いよいよ市街地へと入っていく。綾部の堰堤より200メートルほど上の右岸に、草に覆われた上陸ポイントがある。河原まで車が落とせるようで、他のカヌーツアーのものと思しきバンが停めてある。

雨の日は、鮎釣り師も少ないが、カヌーする酔狂な輩も少ない。あの橋を右に行くと、終着・綾部の堰である。

が、雨ゆえ、泥まみれになるのを嫌って、我々は、綾部の堰堤に乗り上げることにした。朝、車をデポするために来て下見したときには水の上に出ていた堰堤だったが、水位の上がった今はヒタヒタと川の水がコンクリートの上を流れている。といっても2、3センチのこと。無事到着を果たし、撤収。時刻は2:00になろうとしていた。

綾部・堰堤の上にて。 当然のことながら、水量が多いと水はポアオーバーする。

1997年9月13日


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