日本一の清らかな濁流。気田川。

またぞろ、GW前から梅雨の走りなのである。これって信じられる? 昨年に続き、今年も五月晴れは、われらを祝福してくれない。気田川に憧れて、幾星霜。いよいよ決行の運びとなったのに。前日の深夜に降った150ミリを越える雨は、日本一の清流を、日本一の美しい濁流に変えていた。濁流、とは、濁った水のことである。くどいようだが、念のため。

DATE天候区間
2003/4/26小雨のち、晴れ天竜川合流
2003/4/27晴れ気田-天竜川合流
2003/4/28晴れ下社神社-天竜川合流
水質無念。分からない。増水濁流にて、計測不能。
水量★★★++前日に狙いすました雨、80~50センチの増水中。

なんとこの不景気な時に、御大尽三人衆は、名神・東名という高級高速道路を使って念願の「気田川ツーリング」という快挙にでたのである。さぞや、天候に恵まれ、絶好のタイミングでの決行であったのだろうと誰もが思うであろう。しかし9時に待ち合わせた大津パーキングエリアからの眺めは、小雨に煙る琵琶湖。辺りにはひんやりとした空気がただよっている。ラーメン屋台から出ている湯気に惹かれているのは私だけではない。ほら、行列ができている。ああ、ま た、こんな天気かいな。

あまりの運のなさを嘆くうちにどうやら、眠り込んでいたようである。そうそう今回、私はナビゲーター席というラクチン様なのである。すまんすまん と、謝りながら、起きてみると。そろそろ名古屋。「おっ、晴れている。」あきらかにUVをたんまりと含んだ五月の陽射しである。欣喜雀躍として、東名に滑 り込んでいった。

浜名湖で適当に食事をすまして、浜松インターを降りる。あとは一路北上、それほど遠くはない所を天竜川が流れているはずなのだが、平行して走ってい るこの道からでは、川の様子は分からない。ただただ「ええ天気やなあ。ほんまええ天気や」と御天道様を誉め続ける。道すがら見つけた地元スーパーに入り込 んで買い出し。

細い道ではあるがこの土地の幹線道になっているらしくなかなか混んでいて時間がかかる。やっと天竜二俣、ここで天竜川を横切る。あっという間のことで、あまり様子はよく分からない。もうしばらくいくと、再び天竜川が見えてきて、そこからは併走して遡上することになる。

ここでは、天竜はダムのバックウォーターなっていて、ボートハウスが建っていたりする。水は濁っている。しかも普段は静水に違いないはずのボートコースが波立っているのはどういうことだろう。不安な思いを抱いたまま、車は気田川と天竜川の合流点をめざす。

気田川との初対面は、コンクリート色の思い出となった。

「これが、気田川?」まだ4時という早い時間だっただけに、その現実は鮮やかな色彩とともに迫ってきた。「おそらく普段は、少々増水しても手前のクリークのような薄緑をしているのだろうなあ。」

初日

で、なんやねん。この川の色は…。

「まあ、よろしいがな、何もそんな目くじらたていでも、今日は、ここで野営するだけのことだんがな、漕ぎ出すのは明日だっしゃろ、ひとばん寝たら、 何もかもええ塩梅になってますがな、悪い方悪い方に考えんのがあんたの癖でっせ。とりあえずキャンプ張って、酒飲んで、アホ話しでもしなはれ、よろしおす な。」と心の菩薩様に説得されつつ、野営の準備に入った。酒ならいっぱい買ってある、薪もたくさん集まった。さあ、宴じゃ、宴。

翌日。まぁ多少、水はひいたが、この色はなんだ。向こうに見える白い板を吊るしたラインが天竜川合流部

で、夜が過ぎ、朝がやってきた。おーっ、ほら水がいくらか退いている。でもなぁ、こら殺生やで。

27日、一応、出艇にそなえて車一台をデポして、上流、気田を目指す。

ええ天気やなぁ。何もカヌーするだけが人生とちゃうで。日頃のストレスを新緑で洗い流すとか、神社にお参りするとか、温泉に行くとか、いろいろやることはあるわいな。なぁ、みんな。ワシの話、聞いてるかぁ。

気田橋の旧道から河原に車を落とすことができるのであるが、増水のため、洲がなくなっており荷物を卸すところがない。

ああ、こらアカンアカン。川の神さんが、やめときなはれて言うてるわ。なぁ、ワシの話、聞いてるかぁ。

再び道路にもどって、右岸の堤防上を下流に向けて、車を走らせる。やがて、平木大橋が見えてくる頃、河原に降りるスロープを見つける。いわゆる出艇ポイントというやつを見つける。

時計を見ると10時であった。まぁ今からやったら、どっかの温泉に辿り着いたらちょうど昼飯って感じかなあ。なぁ、ワシの話、ちゃんと聞いてるかぁ。

川ちゅうもんはなあ、石が透けて見えて、新緑や青空が水面に写って、ひと漕ぎひと漕ぎ、前に進んでる実感を感じてこそ楽しいもんなんや。なんでもかんでも漕げばええというもんとちゃう。

そうか、分かってくれたか、ありがとう、ありがと。さ、温泉にでも行こかぁ。

あれー、ところでもう一人のあんさん、何してまんのや。いきなり、艇をおろしたりして。まるで、カヌーでも始めるみたいでっせ。なぁて、ワシの話、ちゃんと聞いてまっかぁ?

なぁて、難義やなぁ。あんさん。あれっ着替えまでして、そんな強引な。どうしてもワシの話が分からんか?

何?ひとりででも行くってか?そらぁアカン。絶対にアカン。なぁアカンて。 そんなこんなで、説得失敗。結局、カフェオレ色の水面に赤いインディストラクティビリィー号が浮かぶことになってしまった。

あの橋のどっちかは洲があるはずだが、これじゃ何もわからん。

なぁ、ワシの話、聞いてるか?秋葉橋まで行くだけやで。で、あそこの蕎麦屋で、旨いそばをすすって、神社に参って、以上終了ってことにしようや。な。

11時、かくして2艇は、陸を離れた。残る一人は車で、地上からのバックアップ。ああ今日一日が、厄年の私に厄が降り掛からぬ一日でありますように…。

うわっ、ほんまに何も見えない。

うわっ、ほんまに何も見えない。

漕ぎだすと、とにかく流れが早い。いやでも前に進んでいく。ここから先のことは、何の参考にもならないので、記録を割愛させていただくが、とにかく本流があると思われる上だけを漕いでいった。川の中の様子はまったく分からない。偵察するポイントさえない。

瀬自体は素直なものの、水の力が強い。

しかしあっちこっちとカーブするし、意外なところに瀬が出現しており、気がまったく抜けない。結構大きな三角波がたっているところが連続してやってきたりして、嫌が上でも漕ぎ続けることになり、ますますスピードもアップ。飛ぶように進んでいく。

新緑が、茶色の大地いやいや大河の上に、美しい。
役場前で、日本一・きれいな川をバックに。いい写真が撮れた。
ええか、きょうはココまでやで。聞いてるか、あんさん。

すると、どうだろう。あれ、秋葉橋じゃないかしら。時計を見ると12時だ。通常3時間くらいの行程と聞くが、わずか一時間、時速12キロで漕ぎ終えた。ああ、よかったよかった。で、蕎麦じゃ、蕎麦じゃ。

★★ここでワンポイント情報★★

ところで、秋葉橋左岸から上の道路へは、すぐにあがれるのだが、そこにあるこの蕎麦屋さん「路人」はなかなかにうまい。田舎風のうちたてソバが いただける。あと、どうやらこの近辺に味を競う蕎麦屋が数件あるらしく、蕎麦めぐりをしてみるのも一興かも知れない。店にあった蕎麦屋さんのリストを持っ てきたはずなのだが、紛失。これ以上情報を書けなくて申し訳ありません。イワナの塩焼きだ、自家製こんにゃくだ、地ビールだと飲んでいるうちに、太陽は傾 いていった。★

いよいよ最後の瀬で、岩にはりついたT氏。なめたらアカンよ。

さぁ、腹もいっぱいだし、キャンプ地はもうそこだし、どうやって時間を過ごそうかと考えているところだったのだが、また一人出艇の準備をしている輩がいる。

わからんやっちゃなあ。今下ってきた通り、何もオモロなかったでしょうが。といっても聞いてはいない。まあ、あと一時間の辛抱と思えばいいか。でもどうか、厄病神さん、私にだけはとりつかないでね。

2時出艇。川の情報は割愛します。とにかく、速い速い。次から次からやってくる瀬をバッサバッサと漕ぎきって、3時にはキャンプサイトに戻ってきた。ああしんど。

★★ここでワンポイント情報★★

さて、ここキャンプ地には、何もない。ま、それは当然なのであるが、こんなに時間のゆとりができたとなると風呂ぐらいは入ってみたいよなぁとい うことになる。で、おすすめなのが、春野町福祉センター。役場の対岸に建っている瀟洒な建物がそれ。500円払えば、町民以外でも利用が可能。ただし、日 によって開いている時間が違うし、休館日の設定が複雑なので、たしかめてから行った方がいい。休日、休前日は19時半までやっているが、それ以外は16時 まで。電話は(0539)89-1129★

その帰りに、コンビニ(酒あり)があるので、買い出しもできる。ちなみに隣りはガソリンスタンド。

こんな朝、清い川辺で目覚められたら、しあわせだろうなぁ。

28日朝、水はまた少し退いた。しかし、色は…。

しかしさすがカヌーイスト憧れの川。荷物の整理をしていると、次から次へとデポ車を置きにクルマが入ってくる。当然のことながら相方のクルマを伴っ てやってくるから、10台20台とつらなる大変なラッシュ状態になる。ああ、こんなにたくさんの同類がいる。濁流を下る同類が。

ああ、やる気のなさが肩にあらわれているなぁ。

とうとう気田の女神さまは、我々に微笑んではくれなかった。昨日バックアップにまわったK氏、まあせっかくここまで来たんだから、ちょっと下ってい こうということで、秋葉橋から天竜川合流までの下半分を再び漕ぐことにする。いわゆるゴルフでいうワンハーフ。(もちろんカヌーを始めてからは、ゴルフな どやったことはありません。天に誓ってホントです。)

いい天気である。これなら、船は早く乾く。つまりさっさと撤収。こうなったら、違う川を攻めてやるという計画にした。

この間、記録は割愛。やはり、ふだんの何の参考にもなりません。ただ、こんなときにどうしても下らなくてはならないときには、ちょっとでもヘンな白波が 立っていたり、岩が出ていたら、とにかく大袈裟なくらいキョリをおいて避けることです。(昨日、最後の瀬で岩に張り付いていたT氏は、今日も同じ岩に張り 付いていました。いいですか、みなさん。大回りは三文の得。覚えておきましょう。)

ずいぶん、水は減りました。それは確かです。

さて、艇を乾かして、次の川へ。めざすは、奈良と京都の県境、木津川。なんとか暗くなる前に着けたらいいのだが…。でも、やっぱ、浜名湖といったらウナギでしょうとかいって時間を食っているから、案の上、大変なことになってしまうんだな、これが。

2003年4月26日


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