幸せの熊野川、再訪

今回は、K君の新艇購入記念ツアーである。何故か雨模様であるが、まあとりあえず気にしないで行くしかない。

DATE天候区間
1998/7/11雨のち曇田戸-小川口
1998/7/12小川口-志古
水質★★★+相変わらずの清冽さ。十津川合流後も意外に美しかった。
水量★★★腹を擦らないで済むのが、なにより有り難い。

待ち合せは、8:00名阪柏原インター。

ここから4時間30分のロングドライブ。さ、頑張りましょう。

志古に当着すると、なんとなく雨はあがっていたのだが、田戸に遡るとまたイヤーな雲行きになってきた。

田戸へと向かう小一時間の山道は、途中おおがかりな工亊が行われていた。また、所々少しずつ拡幅が為されたようで、一昨年に来た時のようなエグい道 ではなくなっていた。こんな所でも時間は止まってくれないようだ。もちろん地元の人にとっては、これでやっと便利になったのである。よそ者が文句を言えた義理ではない。

いよいよ田戸の瀞ホテルへと降リていく道。これもまた立派に舗装されていた。さらに驚いたことには、突き当たりに何十台と停められるようなアスファ ルトの駐車場。一体これは誰が使うためのものだろう。以前来た時は、小さなバス・ロータリーがあるだけで、その隅っこに2・3台のクルマが停められるかど うかという場所だったのに。

あたりに人がいるわけでもないので、そこに駐車しようかとも思ったが、ひょっとしたら瀞ホテルの駐車場かも知れないし、駐在所の敷地かも知れないの でやめておく。以前と同様のロータリーの片隅に一台をデポする。あの駐車場が何なのか分かった人は、是非メールをくださいませ。

さて、瀞ホテルの脇から河原へと通じる道は、例によって結構体にこたえる。ただ今回は、一人きりではないので荷物の分担もできる。案外スムーズにいった方だと思う。

いつかこの上流部を、ファルトで行く。ことができるだろうか・・・。

玉砂利の美しい北山川の河原に立つ。渓谷の底にあたるこの出艇地点は、いつも心地よい静寂に包まれているかというと、あにはからんや、ジェット船観光客用のみやげ物屋が立ち並び、鮎の塩焼きの匂いが漂い、上流からはポリ艇が大挙して下ってくるわで、なかなか賑やかな河原になっていたのであった。

ただ景色だけは、雨上がりの靄たちこめる、あの幽幻な渓谷。何一つ変わっていなかった。艇を組み立て終わると、K氏艇の厳かな進水式。とはいえ、いつのまにか時刻は3時半。ジェット船の最終便も出ていった。いつものようにあたふたと、出発していく我らであった。

やっぱ、瀞渓は靄が似合う。と思うんだ、ボクは。

何が嬉しいといって、腹を擦らないことほど嬉しいことはない。下見をしないで済むことほど楽なことはない。そのうえ、水が澄んでいるのだから、これ以上何を望めばいいだろう。雨もいよいよ上がりそうだ。しずしずと川面を滑っていく。

何も聞こえない。パドルが水を掻く音だけが川面を漂ってくる。

どピーカンの瀞渓を下るという経験も一度ぐらいしてみたいが、でも、こんなしっとりした瀞渓っていうのが結構気に入っている。さて、みなさんは、どうだろう?

さて、予定通りに小川口に到着したのは、例によって夕闇が迫るちょっとだけ前だった。河原の長大なこのスペース。どこにテントを張ろうが自由自在。でも、瀞流荘の近くが、きっといいんでしょうねぇ。トイレも近いことだし。

朝は、何事もなかったように明けてくる。ただ隣りに寝ていたK君が、深夜に何を夢見てか我が手を握りしめてきた感触だけは、ボクの脳裏に残ってい た。はてさて、どんな相手が夢の中に登場していたのかは知らぬが、ストレートを自認するボクとしては、その感触自体が一生忘れられぬほどの衝撃であった。 翻って、反対側には、ただただ泥状態になって寝入っているもう一人のK君がいた。幸せとは、何も知らぬ所に存在するのである。「山のあなたの空遠く、幸せ 住むと人のいう」なんて、言葉を思い出しつつ、無意識に訪れる幸せという姿を、二人の寝姿に見ていたボクであった。

だから、朝から眠たいのである、もう! 。天気は、素晴らしく晴れ渡ってはいたが。昨夜の顛末を話題にしつつ、コーヒーを飲む。笑いとばして出艇の準備をする。当たり前だ。笑いにならなかったら、洒落にならないじゃないか。

さて、川面に出ると、美しき熊野川。幸せを噛みしめるようなパドリングとなる。朝の早い内は、静かな時が過ぎていくのであるが、十一時を過ぎると、 ジェット船が行き交うタイムになってくる。夏の観光シーズンだけに、ずいぶんと便数が多いような気がする。次から次へとマストの先に黄色いハンカチを結び つけたジェット船が、遠くからやってくるのが見える。

となると我々は端に寄るしかなく、横波に備えて、垂直に艇を構えることとなる。ま、心優しきジェット船は、カヌーがいるとグンと速度を落としてはくれるのだが。

名物ジェット船と、ファルトの邂逅の図である。

十津川の合流点が迫ってくる。だいたいそれ以降は濁ってくるので、泳ぐならいまのうちということで、もんどりうって、自力で沈をする。沈をしたい川こそ、本当の川である。しばし遊んだ後で、タッグを組んで記念撮影。ソロ・ツーリングにはない、ふくよかな瞬間である。

ジェット船さえこなければ、のんびり船上宴会だってできるのだが・・・。
志古に上陸。いい大人が、子供のような顔をしているんだから、全く。

4:00。志古上陸。 三十も過ぎたいい大人たちが、子供のように笑っていた。これって、いいことでしょ。みんなに喜んでもらえて、わたし、本当に良かったです。でもね。これか らデポ車を引き上げて、荷物を積み込んで、それでもって大阪まで、睡魔との戦いの運転が始まるなんてことは、ひょっとして、まだお知らせしてなかったんで したっけ・・・。これは失礼しました。行程上の無理をお許しください。

さ、頑張って、帰りまっしょい。

1998年7月11日


コメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です